1.1. 背景① 【教育の質向上・質保証】

eポートフォリオの現状

 近年,欧米の大学を中心に,教育分野でeポートフォリオの導入・利活用が進んでいる.
日本においても,同様に進んでおり,例えば日本教育工学会における「eポートフォリオ」に関する投稿論文・発表数の推移を見てみると下図のとおりである.

 これを見ると,1999年から論文が存在し,2004年にかけて集中的に投稿されるようになっていることが分かる.これは小・中・高等学校の総合的な学習の時間に関する論文が主である.また,それと入れ替わるかのように,2005年以降からは大学を対象とする論文が出現し,2012年には最大の投稿数となった.

 下図はeポートフォリオを利用目的毎に分けているが,2009年頃から学生の教育に関する発表件数が増加している.

 eポートフォリシステムは,機関による独自開発のものが多い(75%程)が,2009年からオープンソースシステムが台頭してきている. また,全学カリキュラム(正課・正課外を含む)を対象にしたeポートフォリオが多く用いられるようになってきた. しかし,eポートフォリオの利活用は進んでいるが,複数年に及ぶ継続的な取り組みによるeポートフォリオの本質的効果について報告したものは,まだほとんど見当たらないのが現状である.

教育の質向上・質保証

 近年,大学教育がグローバル競争にさらされる中,教育の質向上・質保証の必要性が叫ばれるようになった.それは,各大学が学生にどのような力量を身につけさせ,そのためにどのようなカリキュラムを用意し,それらをどのような方法で保証すべきかについての議論であった.しかし,ここにきて教育の質保証をめぐる動きは,先の「インプット」から,学生の学習成果である「アウトカム(ラーニングアウトカム)」へと焦点が移りつつあるといって良い.

 このように,学習成果の基づく教育の質向上・質保証が重要視される中,そのアカウンタビリティ(説明責任)をいかに果たすかが求められるようになったが,その際にその“証拠(エビデンス)”の提示が不可欠になるのは当然である.このエビデンスにあたるものが“eポートフォリオ”である.

 つまり,今後eポートフォリオシステムは,まさに教育を司るシステムの中核のひとつになってゆくと考えられる.

参考図書

 斎藤里美・杉山憲司(2009)「大学教育と質保証」,明石書店